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12人の美術家が市長に激励文を渡す

貴志カスケWrote

12月2日に日本画の上村淳之氏ら12人の美術家が市役所で市長と会い激励文を渡し、命名権を導入する市の方針に賛意を示しました。
12人の美術家は京都市の文化功労者が11名、日本藝術院会員が6名など立派な肩書を持った方々である。分野は日本画、陶芸、漆芸、書家、染織家、木工家と幅広く見えるが日本の伝統文化に基づいた作家ばかりで、洋画家や彫刻家、現代美術家が名を出していないのが特徴です。
12人の美術家が動き出したということは彼らが京都市美術館の命名権問題で多くの美術家が疑問を出し、市民らの撤回の声が大きくなりつつあるので、危機感を感じて市長を励ましに来たか、あるいは行政がお膳立てをしたのであろう。
この非常に珍しい作家の励まし訪問に権威や権力で美術家や市民の声を抑え込もうとする狙いがあるのだとしたら、それは大きな間違いです。
特に、美術家にとっては斬新な作品を作るためには権威や権力におもねてはいけないことは自明の理であります。素晴らしい業績のもと結果的に名誉ある地位に栄達された美術家であっても、その地位に胡坐をかかず笠に着せず、世界を思考し謙虚に制作をすることが美術家の務めであろうかと思います。そういう意味で今回の市長への励まし訪問も撤回運動をする我々に間接的に助言を当てえてくれた動きだととらえております。そういう意味でその助言に対していささか疑問がありますのでここに明らかにしたいと思います。
激励文を読ましていただいたら、「深甚」や「首肯」などと難しい言葉を使われていて格調高い文章ですが、内容がその格調の高さに比べて平易です。
50億円も出しいただく京セラ株式会社の気概に感服し深甚なる敬意を表されて、そのことが自社の広告利益のためではなく、京都市民、そして京都の文化芸術のためを願ってのご決断であったと拝察されているのですが、そこまで奥深く京セラ株式会社のことを心得られているのであれば、一言ネーミングをはずしていただくことをお願いしてくれればと思います。そうではなく「多大なご貢献をいただいた支援者を顕彰するために、愛称を冠することについて、我々一同は首肯に値するものと考えます。」と述べ、支援者を顕彰するためにネーミングライツを差し出したい的な考えに大いに疑問を覚えます。「愛称」だからいいじゃないかという安易な考えでは困ります。ロームシアターを見てもわかるように世間に通用する名称が変わるのですから今は以前の名称は市民の頭から消え去っています、このことは文化的に大問題なのです。その辺のところを12人の美術家はどこまで考察されたのであろうか聞きたいものです。
ネーミングライツを売る施設はどれが良くて、悪いのかその辺の考察をされたのかも疑問です。多大なお金がもらえればどんな施設であれネーミングライツを差し出すのかということです。このような考えでは今度引越しを予定している京都市立芸術大学も二条城も多大なる寄付でネーミングライツを差し出してしまうのでしょうか?
楽天がサッカーのバルセロナのチームのユニホームに「RAKUTEN」と入れるだけで年間70億円の支払いをします。京セラ株式会社の年間1億円と桁が違います。お金持ちの企業はたくさんあります。そんな企業が京都に現れて京都市では金を出したら何でもできると思われるのも困ります。
鎌倉市の海水浴場3ヶ所の例では、2013年に『鳩サブレー』で知られる菓子店の豊島屋が権利を購入したものの、一般公募の結果呼称変更を行わず旧名称のまま運営を続けている(ただし形式上は「命名権を行使して、旧名称と同じ呼称を名付けた」形である)と豊島屋が粋なはからいをやっています。
京セラ株式会社にそのようなはからいをお願いして市民に公募をしてみてはどうなのでしょうか?
また、ネーミングライツに付属した、京セラ株式会社の宣伝ブースの件施設使用優先権などのことには全く触れず、このままでは京セラ株式会社の専有の美術館となり今後の寄付や寄贈も他の企業から得ることが難しくなることなどへの考慮がどれだけされたのか疑問です。
この激励文には常設展示室のことは書いてあっても現代美術館のことには全く触れていません。彼らにとって現代美術館は本当にいると思っているのでしょうか?
また、美術館の代替え施設の用意、計画もなく強引に工事を進めようとしていることについても、何の考慮もなく京都市に「力強く邁進していただくよう」お願していることにも疑問を覚えるところです。
 三年間、美術館が閉鎖され今まで美術館を利用してきた団体の発表が出来ないということは市民にとっても美術鑑賞が出来ないことです。当然その空白を埋めるべく代替え施設を用意するべきであり、美術行政にとってはそのことが重要問題です。見識あるこれら12人の美術家がこのことにも一言も触れずにただ「世界を代表する美術館として飛躍」することを念願しても空虚な美辞麗句にしか聞こえません。
 世界を代表するルーブル美術館などはいくらお金を積まれてもネーミングを売ることはないでしょう。見識ある12人の美術家の皆さんは行政に利用され日本の文化度をおとしめるお先棒を担がないようにお願いたします。
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by kyotomuseum | 2016-12-06 07:41 | 文化問題

京都市美術館ネーミングライツを撤回する運動体です。

by 京都市美術館問題を考える会